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内容に関しては散々出回っていますし、リリースから一ヶ月経っているので、ネタバレ前回でお送りします。

二人のビッグ・ボス

リリース前から予想されていましたが、MGSV TPPの時間軸においてビッグ・ボスと呼ばれる人物は二人居ます。つまりMGS3から出ているネイキッド・スネークと、MGSVから現れたビッグ・ボスの影武者ヴェノム・スネークです。

本編での操作キャラクターは一貫してヴェノム・スネークで、ネイキッド・スネークの姿はEP1の包帯男、EP46の世界を売った男の真実にちらりと登場するだけ。結構、影武者設定を批判している人がいる印象ですが、私は別段悪いとは思っていません。問題なのは、その影武者設定を上手く活かせなかったことです。やりたいことは分かるんですが、やっぱり時間が足りなかった、というのが私の見解です。

ヴェノム・スネーク

mgsv venom

TPPの主人公でビッグ・ボスの影武者。元はビッグ・ボスの最も信頼する兵士で、GZではメディックと呼ばれていた彼のこと(全ステA++で医療知識持ちって、そりゃ信頼されますわ)。MSFが襲撃された際に爆発からボスを庇って重症を負い、人とは思えない酷い姿になっていたらしい。その体には様々な異物が摘出できずに残っており、頭部の角のようなものの他に、人骨や歯などが食い込んでいる(恐らくパスのもの)。ビッグ・ボスの記憶をすり込まれているので、自分がビッグ・ボス本人だと思い込んでおり、その行動はMSFの副官カズヒラ・ミラーを騙せるほど。九年間も眠っていたとは思えない働きを見せてくれます。

表現不足、描写不足で今ひとつそういった印象はありませんが、実はカズヒラなみにキレています。いうなれば激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム。その怒りのパワーは空飛ぶ旅客機で移送されていた幼い頃のサイコ・マンティスを目覚めさせるほど。サイコ・マンティスによってその旅客機は墜落し、なんか研究所にいたヴォルギン大佐が暴れ出すことに……(病院のラジオからそのときのニュースが流れている)。そういう意味では、TPPの開演ベルの鳴らしたのは彼だったと言えます。

その後、クワイエット、及びサイファーの襲撃から辛くも逃れたヴェノムは、オセロットの手引きでアフガニスタンに向かい、ダイアモンド・ドックスという新しい組織で戦い始めます。ダイアモンド・ドックスを拡大し、クワイエットを惚れさせ、コードトーカーを仲間に引き入れ、ついにはスカルフェイスを討ち果たします。事件はこれにて一件落着と思いきや、MSFで変異した声帯虫によってバイオハザードが発生し、仲間の兵士達をその手に掛けます。マジゲスのエメリッヒにはなじられ、保護していた筈のイーライ達少年兵は脱走し、突如クワイエットも居なくなります。

ビッグ・ボスの亡霊――ファントムであったヴェノムは、数々の痛み――ペインを負うことになりました。恐らくは劇中で最大の被害者で、敵役だった筈のスカルフェイスとは共通する部分が多いです。友達思いだけど人間不信が入っているゼロによって勝手に顔は変えられるし、ビッグ・ボス教の信者であるオセロットによって記憶は書き換えられるし、過去とアイデンティティは失われ、まさに踏んだり蹴ったりです。また故人であるパスに対して個人的な思い入れがあったのか、彼女が救助されたかのような幻覚を見ています。まさにサブタイトルのファントム・ペインを表す存在と言えるでしょう。

最後のシーンで鬼と化した自分の姿を幻視し、それを否定するかの如く殴りつけています。本質がスカルフェイスと同じであるということが表現したかったのに、時間不足で中途半端に終わったのか、テーマを表現しきれなかった感が強いです。MG1のアウターヘブン蜂起の際、ソリッド・スネークに殺害された模様。

ネイキッド・スネーク(ビッグ・ボス)

mgsv bigboss

劇中では殆ど描写されていない人物です。あまりに説明不足すぎて、何がしたかったのかがかなり不明瞭。ゼロが作った影武者に乗っかった形になりますが、顔を変えてまでどこにむかったのか、その辺りの描写が足りなかった。せめて、本編中に整形後の姿で登場して、存在を匂わせておくとか、色々やりようはあった気がしますが、二章以降があの有様なので、結局そういった要素を盛り込む余裕も無かった感じでしょうか。企画会議中にそれ位はアイデアとして上がっていたと思うので……。

恐らくはMGSVで最も株を下げた人物でしょう。俗に言うカリスマブレイク。結局ヴェノムはMSFを復興させることに成功していますし、影武者を用意して入れ替わった意味がなかったような……。ストーリーとしてまったく取り替え要素を活かせていないので、尚更完成度が低く感じられます。

MSFの関係者達

カズヒラ・ミラー

mgsv mir

九年前の事件で色々と失ってしまった人で、描写の薄いスネークに変わって復讐者としての描写が多いです。スカルフェイスを痛めつけたことでその望みは叶ったものの、失ってしまったものが還ってくるわけでもなく、第二章では仲間に内通者が居るんじゃないかと猜疑心に囚われ、MSFのスタッフからも「最近の副司令はちょっとおかしい」とまで噂されます。これまでのおちゃらけたキャラクター、狂言回しとしての役割はめっきり減少しました。

カズヒラはヴェノムが影武者であることを知りません。ただしヴェノムに多少の違和感は持っていたのか、ヴェノムが目覚めた1984年内には感づいており、オセロットを問い詰めています(ラストの描写)。カズヒラは自分を欺いていたビッグボスに失望し、サイファー(愛国者側)に付いてでも、彼と敵対する道を選ぶことになります。彼はビッグ・ボスを倒すためにソリッド・スネークを鍛えることになるわけです。

オセロット

mgsv os

新生MSFでは兵士の訓練教官、兼犬の調教師。「ウェスタンでも見たか?」 って君がそれを言うのか、たまげたなぁ……。

ヴェノムに記憶の刷り込みを行った主犯。更に自己暗示によってヴェノムが本物であるかのように振る舞っていました。ビッグ・ボス一神教の信者で、その辺りがカズヒラとの温度差に繋がりました。あくまで本物のボス相手として振る舞っているので、もう一人のボスであるヴェノムの判断を尊重します。MSFのスタッフを大勢失ったことによって大分過保護になっているカズヒラは、特にボスの危険に対しては人一倍過敏なので、クワイエットの処遇など意見が対立する場面が多いです。

ゼロと合わせてビッグボス影武者作戦の主犯なので、徹頭徹尾ネイキッド・スネークの勢力に付いています。MGS4で死ぬまでボス第一主義。

ヒューイ

mgsv hyu

株を落としたというか、上場停止処分待ったなしの人物で、マザーベースに発生したありとあらゆるトラブルの原因、あるいは遠因になっています。状況証拠ばかりとはいえ、あまりに疑惑が多すぎる上に彼の言い訳、証言が二転三転するので、もう真っ黒にしか見えません。

罪状を列挙するに、

  • 九年前のMSF襲撃を幇助
  • 息子(ハル・エメリッヒ)をサヘラントロプスの実験台に
  • 配偶者のストレンジラブを殺害
  • MSFで放射漏れを起こす
  • サイファーの手土産にと声帯虫の変異を誘発
  • 子供を使って勝手にサヘラントロプスを修理

これに加えて自分に不利な情報は徹底的に隠すというMSFに対する非協力も合わさります。というか、彼が協力的だったら、スカルフェイスを追うために東奔西走する必要も無かったわけで、実は最初からチェックが掛かっていたんですよね。それを考えると罪状が更に増えるというか、いやぁ……ゲスい、ゲスい。

MSFスタッフに寄生しながらも、コードトーカーによって無害化されていた声帯虫の変異を誘発させ、取り返しの付かない事態を発生させたのは彼なんですが、感染拡大を防ぐためにスタッフを殺害せざるを得なかったヴェノムを「仲間じゃなかったのか!」と非難するダブルスタンダードっぷり。仇敵のスカルフェイスにすらクソ扱いされているのでお察しと言えよう。

その後、その悪事が露見するに辺り、「まともなのは僕だけか!」という名言を残してくれました。

ちなみにMSFを追い出されてアメリカに帰国したのち、再婚相手を息子に寝取られて病んでしまった彼は、再婚相手の連れ子と無理心中仕様としますが失敗。彼一人だけがプールで溺死することになります。

なんというか駄目な大人の典型例。自己判断で勝手に行動し、良い方向にしか考えない、自分の失敗を認めない。失敗を取り返そうとして、更に悪い状況に持っていく、自己保身のためには人を殺しても平気と、高潔さとは無縁の人物でした。

パスとチコ

mgsv pas

両者共に九年前に死亡。パスはヴェノムが見た幻覚として出てきます。しかも、ミラーとオセロットの幻覚まで現れて、彼女の病状を解説するというおまけ付き。ヴェノムになったメディックは医療知識に長けていた筈なので、その辺りが都合の良い症状を脳内ででっち上げさせたのかもしれません。

ザ・ボスにしか興味が無いビッグ・ボスと違って、ヴェノムは極普通の男性なので、そういった感情があったのかもしれませんなぁ……。ちなみにパスについてはさらっと流されている。まぁ、興味なかったんでしょう。

次回、サイファーXOF編に続きます。