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なんかボスらしいボスが居なかったというか、EP51でサヘラントロプスともう一度やり合うことになってたんだろうけど、今イチ不完全燃焼だったスカルフェイスとXOFについて。

XOF

スカルフェイス

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GZにてMSFを襲撃した敵役にして、主人公ヴェノムの影。報復に固執する割にはやっていることが行き当たりばったりというか、色々腑に落ちない部分が多いキャラクターです。恐らくは物語を進行させる上で必要になる要素を詰め込んだ結果なんでしょうが、ここぞというときに行動原理が不鮮明になっている気がします。

スカルフェイスはMGS3の時代に存在した特殊部隊FOXの裏組織XOFのトップで、当時ゼロの副官というポジションにいながらも、大国による小国、少数民族の支配を憎んでいました。FOXが解体された後ものちに愛国者達と呼ばれるようになるゼロの組織サイファーの影として存在し続け、果てには世界を一つにしようという野望を抱いていたゼロを憎み始めます。

TPPにおける彼の行動を列挙すると、

  • 民族浄化虫の開発(サイファーの流用)
  • 民族解放虫の開発
  • 歩く核爆弾サヘラントロプスの開発(ソ連が関与)
  • メタリックアーキアによる安価な核兵器の拡散

民族浄化虫、民族解放虫は、俗に言うBC兵器の類です。特定の言語を喋るものから飛沫感染する寄生虫型感染症で、民族浄化虫がマイナー言語用、民族解放虫が英語用です。元はサイファーの末端研究の一つでしたが、アフリカに左遷させられたスカルフェイスが目を付け、英語を喋る者を根絶する英語株の研究を始めました。サヘラントロプスはメタルギアの原型にあたる二足歩行兵器で、メタリックアーキアは新型の核濃縮技術。どれもアメリカによる世界支配、世界統一への反抗であることでは一致しています。

サヘラントロプスは弱体化著しいソ連へのてこ入れですし、メタリックアーキアの方はアフガン、アフリカの武装組織を強化するもの、民族解放虫に至っては、諸に英語圏へのみ機能する大量破壊兵器です。大国による少数民族の支配を嫌うスカルフェイスの思想を反映した兵器、行動と言えます。しかし、これらの行動からは少し外れた、目的があまりに不明瞭な行動がひとつあります。

GZで取りを務めた、MSFへの襲撃です。

MSF襲撃の謎

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MSFはサイファーと繋がりつつも、アメリカの世界支配には関与していません。むしろゼロからは離反した者の組織であり、本質的には相容れない存在でした。カリブ海に核武装した軍事組織が存在するというのはアメリカにとっては都合が悪いですが、少なくとも民族の解放というか、反アメリカ思想の持ち主だったスカルフェイスにとっては、アメリカへの抑止力となるMSFの存在はむしろプラスだったはずです。また、世界を統一しようとする支配者になろうとしていたゼロへの攻撃が目的なら、明らかに警戒されるだろう旧友の襲撃なんて普通しません。これらを考えると、スカルフェイスにはMSFの襲撃に関わるメリットは無かったように思えます。

じゃあ、なんで襲撃したんだよって話になりますが、アメリカ政界、財界が主体だったとしても、反撃されるリスクを考えると、いきなりの攻撃はちと苦しい。なので、その理由を強引にこじつけるなら、あるいはメタルギアZEAK及び核弾頭の奪取が狙いだったのではないかと、私は考えています。元々、反アメリカ帝国主義だったスカルフェイスはアメリカへの対抗策としてなんらかのブレイクスルーが欲しかった。それがメタルギアZEAK、及びそれを開発したエメリッヒの奪取へと突き動かしたのではないか――ということです。スポンサーには成功後、大量破壊兵器を持っている疑惑があったから襲ったけど、持ってなかったみたい、テヘペロとでも言っておけば誤魔化せます。

とはいえ、あくまで推論です。海底に隠していたメタルギアZEAKがその後どうなったのかについては、九年後のTPPでもまるで触れられていませんし、その流用であろうサヘラントロプスは結局未完成でした。ZEAK目的とするにはちょっと行き当たりばったり過ぎるかなぁとも思います。劇中ではサヘラントロプスが動いていましたが、あれはサイコ・マンティスという個人の力があってこそのものですし……。アフリカへの左遷どころか、サイファーの上層部に消されかねない危険を冒してまでMSFの襲撃を実行に移したからには何か理由があったはずなのですが、私にはこれくらいしか思いつきません。

というか、サイファーとMSFが互いの利益のために業務提携していたことを考えると、彼の行動はあまりに行き過ぎた独断専行です。上司に伺いを立てずに国家に匹敵するような武装組織に先制攻撃を仕掛けるとか、どう考えてもクーデターでしかないのですが……。それを考えるとアフリカへの左遷って、いくら何でも軽すぎる裁きだと思うんですけども、結果的には目の上のたんこぶ、核武装できる程の技術を持ったアメリカに従わない集団を排除できたのだからと、軽い処分で済んだのかもしれません。もちろんゼロには睨まれたでしょうが……あるいは彼の持つ復讐の美学、世界を一つにしようとする思想への反感からとも考えられますが、ビッグボスの行動が直接世界統一に結びついていたとは思えない、というのが苦しいところです。

スカルフェスの行動原理

政治的には反グローバリズムとでも言うのでしょうか。最近話題の環太平洋戦略的経済連携協定(奇しくも略語はTPP)もこれに関わるものですが、狙ったものなのか、偶然なのか。

スカルフェイスは幼い頃から大国の支配によって人生を台無しにされており、それへの報復心を美化、正当化することで自己のアイデンティティを保っているきらいがあります。なので彼の感覚からすると報復は正しいことであり、推奨すべき事であり、報復者を作り出そうという傾向がある。そうとでも解釈しないと彼の行動に辻褄が合わなくなります。MSF襲撃の報復のため行動するヴェノムはシンパシーを感じる存在だった(対象は自分だけど)――と、でも解釈しておかないとスカルフェイスのずぼらすぎる行動に説明が付きません。自分の邪魔をしかねないヴェノムに何度となく遭遇しておきながら、何故か確実に止めを刺そうとはしませんし、結局襲撃してくるのはヴォルギンです。ヴォルギンもビッグ・ボスに報復を願う人物ですし、それを尊重した結果が各地での交戦だったと解釈するしかありません。最後なんて、二人で車に乗ってドライブしてましたしね! 

そもそもスカルフェイスには耽美的な行動が多く見られます。悲劇のヒロイン病とでもいうのか、そういう役回りの自分に自己陶酔しているんじゃないかと思われる部分がちらほら。  キーパーソンであるコードトーカーを散々脅して自身への反感を育てておきながら、杜撰な管理をして敵の手に渡していますし、最後はサイコマンティスとの同調をイーライに奪われ、なんとも言えない最期を遂げます。まさに噛ませ犬。

MGSシリーズの黒子

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結果的に噛ませ犬ではありましたが、彼がMGSの時間軸、歴史上に与えた影響は大きいです。というか、最初からそういう目的で生み出されたキャラクターなんでしょう。

まずソ連に技術供与し、超能力といういかがわしい手段で技術力の不足を補っていたとしても、二足歩行兵器サヘラントロプスを動かしたこと。これによってアメリカ側というか、サイファーの一員であったシギント、のちのDATA局長ドナルド・アンダーソンはメタルギアの開発に関わるようになります。劇中で明言されているわけではありませんが、そんなことをオセロットが仄めかしています。要するに二足歩行兵器で遅れを取っているとアメリカ側に思い込ませ、メタルギア開発競争の火付け役になったわけです。

また元々人間不信気味だったゼロを謀殺しようとし、彼が決定的におかしくなる原因となりました。この暗殺に関しても、スカルフェイスは確実に命を奪えるような猛毒を使っていません。いくら証拠を残したくなかったとはいえ、完成度の低い寄生虫を使っています。だというのに、何ものかに犯行の現場を盗聴されている上に、その後ゼロに対して勝利宣言するために犯人であることを半ば認めているので、一体なにがしたかったのか訳が分からないよ。これに関しても、上記で述べたような復讐者を作りたい嗜好で生き残らせたとでも解釈しないと納得がいかない状況です。

そして極めつけはもう一人のスネーク事、ヴェノムスネークを生みだし、彼を復讐者にしてしまったことにあります。どちらも過去と記憶を奪われた者であり、ヴェノムはスカルフェイスを倒した後にも彼の幻影を見ており、トレーラーの過程でも二人を結びつけるような映像が存在します。これらを合わせてみると、ヴェノムがスカルフェイスの考えや意志に少なからず同調していたのだとも考えられます。そして、それが向かう先こそアウターヘブン蜂起だったのでしょう。この事変によってビッグボスとゼロの対立は決定的になり、のちのシリーズの根幹である愛国者達との戦いに繋がっていくわけです。

ここまでのことを踏まえると、スカルフェイスの存在こそがシリーズを繋げるミッシングリンクであり、GZで散々引っ張っておきながらも、最初からラスボスにするつもりは無かったんじゃないかと思われます。言うなればドラクエ3におけるバラモスのポジションで、彼を倒した後に見えてくる本当の敵。それこそがMGSVのラスボス。なのでTPPが完成形になってリリースされた場合、ラスボスとしてヴェノムに立ちふさがるのは本物のビッグボスだったんじゃなかろうか……。

新米であるソリッド・スネークを囮として送り込み、ビッグボス自身がヴェノムと対決するために別口から潜入していたとでもしておけば、MG1とも普通に繋がりますしね。

サイファー

後々に登場する愛国者達の前身になった組織であり、XOFはその下部組織です。トップはゼロで、このときにもシギント、パラメディックが所属していたと思われます。

ゼロ

彼の暴走がスカルフェイスによる暗殺未遂の後遺症によるものとなりました。ミラーは信用していませんが、九年前のMSF襲撃にゼロは関与しておらず、むしろビッグボスを守ろうとしたことが見受けられます。重傷を負ったビッグボスをキプロスの病院に匿ったのは彼でしたし、一度はビッグボスを見舞っています。彼は引き籠もりがちの人間嫌いでしたが、その分友人思いだったようです。出ていってしまったビッグボスを恨んではいませんでしたし、今だ友人だと思っていたようです。

しかしながらビッグボスの影武者をであるヴェノムを作り出したのは彼とオセロットであり、友人を守るためなら、なんでもする人間だったようです。ビッグボスを特別視していた点では両者共通しており、異なるのはザ・ボスの思想をどう解釈するかの違いだけだったようです。大きな組織を束ねる存在になってしまった故の苦悩があり、結果的にビッグボスとは決定的にすれ違ってしまったわけですがね。

ビッグボスが株を下げたのとは反対に、ゼロに関しては評価を上げた気がします。

次回、第三勢力編(クワイエット、イーライ等)