Outlast2 製品版のレビュー、ファーストインプレッション

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大人気?ホラーアウトラストの続編。アウトラスト2に関する感想、レビューです。この界隈では割と良くあることですが、ホラーじゃ無くなりました。一応、細かいネタバレは避けましたが、なんとなく話のすじが見えてしまうので注意。

短評

ホラーというよりはダークファンタジー。システムは前作を踏襲しているものの、良作だったアウトラストの続編とは呼びにくい残念作。

Outlast2
Outlast
05
  • ホラー感は希薄
  • 敵キャラクターが没個性
  • 特に驚きの無い展開
  • カタルシス不足
  • 構成に難有りで説明不足
  • 痛みが足りない
  • ホモが足りない
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06
  • ほぼ前作水準のグラフィック
  • ファンタジックな表現
  • バリエーションの広がった景観
  • 暗くて景観を活かせてない
  • FOVが低い
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Outlast
05
  • ちょっと自己主張が激しいBGM
  • BGMなのか効果音なのか混乱する
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Outlast
04
  • 敵のテレポートが激減
  • 初見殺しが多い
  • フローが不親切
  • 難易度調整にムラがある
  • 敵の配置が短絡的
  • 回復システムが空気
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ストーリー、映像、音楽、ゲーム性。全て1~10までの10段階評価です。6点で及第点、並水準。7点以上は優れているという評価。10点、1点は実質欠番です(ゼウスが降臨するレベルじゃない限りは付けません)。

概要

アウトラスト2は近年の作品では優れた完成度を持っていたホラーゲーム「アウトラスト」の第二作。

前作、及びそのDLCはホモの巣窟と化した精神病院を舞台に、バリエーション豊かなサイコパスとの追いかけっこが楽しめる良作ホラーです。敵側のキャラクター性が強いので、純粋なシナリオとしても楽しめて ――ゲームシステムが単純なのと、エログロが強いのでその分は万人受けしない部分ではありますが、世界構築の上手さもあって窓口の広いパーティー色のある作品に仕上がっていました。

そして、延期を挟みつつも遂にリリースされたのが本稿で取り扱う続編「Outlast2」です。

Outlast2は前作と同一世界の物語であり、カルト宗教が作り上げた村に舞台を移しています。元ネタは千人近い被害を出した集団自殺カルト「人民寺院」。人民寺院はカルト + 共産主義というファンタスティックな合わせ技の組織。危険物と危険物の組み合わせなので、ホラーゲームの題材としては中々的を射ています。期間限定で公開されていたデモはまさにアウトラストの続編という形になっており、大いに期待できる状態でした(デモ感想)。

レビュー詳細

それが……どうしてこうなった。二作目のジレンマに入ったのか、あるいは名前だけ借りた別ものだったのか。

ひとつの完成形となっていた前作アウトラストに比べると、本作アウトラスト2はかなり劣ります。根本的なパワフルさに欠けており、キャラクター、謎、スリル、バイオレンス ――全てがこぢんまりしていて、物語を見せる装置として良くできていた前作からすると、どうしようもなくクオリティーダウンしています。期待値が高かった分、がっかり感が強いです。

ロケーションを野外に移したことで、ビジュアルには幅ができたものの、ホラーというよりはダークファンタジーに近い趣で、ナンバリングタイトルの続編としては色々と問題を抱えている気がします。

シナリオ、世界観に関して

方向性が変わっているので、前作を楽しんだプレイヤーにとっては肩すかしになる可能性が高いです。飛び抜けた個性があった前作に比べると、パンチ力に欠けた内容になっています。ホモもほぼ出てきません。情報が出てこない回想シーン、なんの意味も無い対立構造など、シナリオ構成にも難があります。

ホラーの続編は、前作でタネが明かされているので、どうしても難しい部分があるんですが、題材が恐怖から罪悪感に変わっていて、ホラー色は相当に薄れています。エイリアンシリーズや、リングシリーズみたいに、続編でまるきり方向性が変わって成功している例もあるので、このシナリオでいくならゲーム性を変えるべきでした。敵と殴り合うゲームなら、まだ納得できたかもしれません。

神父と宗教組織

前作に引き続き宗教組織というかグループが出てきて、そのトップも序盤から明示的に示されているのですが、前作のマーティン神父に比べて、本作のクノース神父は露骨に敵対している上、神秘性に欠け、俗物的過ぎました。やっていることがクズの中のクズで、自身の肖像画を家々に飾らせている、放送を使って村人を扇動するなど、権力志向が見え隠れする人物です。

肥満体で強姦魔。子供を虐殺したり、人質や拷問を使って従わないものを攻撃したり、醜悪な敵としての描写が多いので、恐怖よりも怒りが先行します。要するに倒してしまいたい敵になっていて、ホラーとしては適当と言えないんですね。描写がただのゲスなので、「さっさと殺そうぜ。日が明けちまうよ!」と思ってしまう。ただの非人道的な独裁者で、追跡してくるのはその取り巻き達。アウトラスト1にあったコミカルな狂人像が失われていて、前作の続編を求めているプレイヤーにとってはまず期待はずれになるでしょう。

ヒーローが闘うべき敵役みたいになっているので、これがバイオシリーズなら良いんですが、逃げるしか選択肢のないゲームではただのフラストレーションです。背景が示されていないので同情できるような要素も無く、登場させるゲームをちょっと間違った感じ。バイオ4のサドラーから、カリスマ()を除いて、現実志向なガチクズにしたような人物なので、プレイヤーにとって不快すぎます。モデルになった人物を踏襲したのでしょうが、それが禍しています。

追跡者のキャラクター性

前作だと色んなバリエーションがあったサイコパスたちが、今作では全て同一の宗教に根ざした考えを持っています。それに加えて、敵側の背景が今一つ説明されないので、個性不足が目立ちます。

  • 筋肉だるまのクリス・ウォーカー
  • そのだるまを瞬殺するワールライダー
  • 味方のふりして現れたドクター
  • ガチホモのグルースキンニキ

といった強烈過ぎる見た目、キャラクター性の敵が出現しません。それらは前作アウトラストの面白さを形作る一旦になっていたので、それが失われてしまったことが残念でなりません。アウトラスト2では皆狂信者で、立場の違いや生い立ちも肩車以外は不鮮明。なんで内ゲバ起こしているのかも不鮮明。

なんだ、このおばさん! と思う相手は、徹頭徹尾なんだ、このおばさん!止まりです。しかも敵の末路もドクターやグルースキンのような、劇的な最後も出てこない。おばさんに至っては、なんでこうなった……ですし、終始キャラクターの扱いが雑になっています。ターミネーターシリーズで例えるなら、T-1000型に比べて魅力が足りないT-Xみたい。確かに追いかけてくるけど、近寄りがたい変態感、ヤバさが薄れているのでなんか白熱しません。

あと、せっかく第三勢力を出したんなら、そっちは一応味方みたいな形にした方が良かったかも……。サタニストの集団が主人公、宗教組織に次ぐ第三勢力として出てきますが、序盤ペロペロしてくるだけで結局空気化。説明不足のまま主人公とも敵対するので、なんのための対立構造だったのかよく分かりません。トップが男なのか、女なのかもよく分からん。

目論見があったとはいえ、一応妻を助けてくれましたし、取り敢えずの協力関係にしておいて、やっぱり敵対するなり、裏切り者だと思われて追いかけられるなり、双方のサイコパスが血みどろの争いを繰り広げるなりの形にした方が良かった気がします。サタニスト住民の視点から多少語らせれば、致命的な説明不足も回避できたでしょうし……。

予定調和の展開

モチーフとして旧約聖書の内容を大きく取り扱っています。それになぞらえた展開が続くわけですが、良くも悪くもそれだけしかありません。聖書の内容を聞きかじったことのある人間なら、まぁそうなるだろうな……という予測通りにことが進みます。概ね、デモのときにした予想通りです。

恐らくはモチーフにに縛られすぎでした。もっと自由に発想して、組織の内ゲバを上手く利用すれば、もう少しドラマチックな展開にできたのでは……と。前作との繋がりを希薄にしたことで、説明不足にもなっています。独立した作品として成立させようという判断なんでしょうが、最後の解釈とか、結局モーフォニックエンジンの存在を知らないと、意味不明だと思うんですが……。

ゲーム性に関して

神話題材なせいで、神秘的、ファンタジックな表現が増えており、それがホラー感を削ぐ原因にもなっています。「アウトラスト」というホラーの続編とするには、ホラーらしからぬ要素、適当ではない要素が多すぎるのが難点。チェイス、ステスルの面白さを大きく削いでいます。先に述べたシナリオ、世界観の問題点もその一端。個々の要素が喧嘩している状態なので、ばっさり割り切って、別のゲームにした方が良かったかもしれません。

従来作どおりの追いかけっこはあるんですが、追いかけてくる相手が個性不足なのは先にも述べたとおり。それに加えて、チェイス、ステルスの調整不足が見受けられます。難易度が乱高下する他、初見だと無理だろうという部分が相当多い。

チェイスの進路が分かりにくかったり、扉の向こうに敵が待機していて、明けた瞬間にワンパン即死する場所がチラホラ。収集要素があるのに、それを阻害するような一発アウトをいれるのは如何なものか……。敵の攻撃力が総じて高いので、逃げる暇も無くやられるケースが多いです。

あまりにも一発アウトが多いので、自動回復が無くなったのも意味をなしていません。本作では回復がアイテム頼みなんですが、回復する暇がないケースが多発します。包帯の所持限界も少ないですし、動きながら回復することもできません。戦闘中に隙を見て回復みたいな要素も無いので、結局回復が面倒になっただけです。

まとめとしまして、ゲームプレイの難易度は前作より明らかに増していますが、それに利点が感じられず、ほぼ改悪になっています。リトライが増えると緊張感がなくなるだけですし、サイコブレイクみたいなアクション要素やパズル要素もないので、無闇に難易度を上げても作業間を増大させるだけになっています。前作アウトラストはゲームプレイが単調で、簡単過ぎるきらいはありましたが、それが物語への没入感を高めていました。死にそうで死なない状況を作るのが重要なのに、本作では理不尽気味な即死要素が増えていて、快適とは言えないゲームになっています。