Ln ev5

リトルナイトメアの考察。劇中の表現がふわっとしていて確証は無いのですが、私はこういう風に解釈しています。普通にネタバレしているので注意。

移転後のサイトに修正版があります(参考)。

シックスと愉快な仲間たち

主人公である少女シックス。怪人から逃げ惑い、度々腹を空かせている姿は庇護欲を誘います。一方でネズミや、友達のノーム、果てには敵であるレディーを捕食するなど、凶暴な一面も持ち合わせており、エンディングではゲスト達を次々と手に掛けています。

所謂、二面性を持ったキャラクターなんですが、それもそのはず。恐らくは複数の存在を1人の人物として描写しています。このゲームではやたらとダブルミーニング(同じ言葉で二つの意味を持つ)が使われていて、主人公の名前や存在からもそれが窺われます。いわゆる「信用できない語り手」要素を前面に使っている作品なので、確証は無いのですが、表向きはダークファンタージだけど、裏では現実を舞台としたミステリになっている気がします。

シックスという名前の由来

主人公シックスの名前は、恐らくダブルミーニングです。

  • 数字の6: Six
  • 病気の: Sics

どちらも同じ発音の同音異義語。

6歳くらいの少女が主人公。666は悪魔の数字。本作開発時のタイトルが「Hungry」で、7つの大罪の6番目「暴食、大食」を意味していると、何か意味がありそうです。

もう一つのシックス ――病気の方は、主人公の少女が空腹に襲われるたびに咳き込んでいるのが代表的でしょうか。そんな少女がうろついていたキッチンのシェフもたびたび咳き込んでいるため、伝染性が認められます。伝染病の飢餓とは、新しい宿主と細胞を求めることであり、シックスが飢えに苦しむたびに咳き込んでいるのはどうも意味深です。

複合的に考えますと、

  • シックスは何らかの病気に罹患している6歳の少女である
  • 実在の人物ではなく、伝染病やその原因である菌、ウィルスを擬人化した存在である
  • その両方である

この辺りが考えられます。本命は最後に上げた第三案「その両方である」です。両方というのは、6歳の病弱少女でもあり、伝染病の擬人化した姿でもあるということです。2人を1人の人物として誤認させる叙述トリックがありますが、それと同様のパターン。

シックスが病気にかかった孤児の少女と、その病気を抽象化した存在が重なり合っていると考えると、まるっと収まる部分が多いです。後半にあったノームの捕食、レディーの捕食、ゲスト達の末路。そう考えると、色々辻褄が合う部分が多いです。シックスの行った残酷な捕食シーンを切り取ってみると、伝染病が牙を剥いてノーム、レディに感染したと取れますし、最後の八つ墓村も伝染病のパンデミックと受け取れます。

ノーム

ノームの存在は数多の孤児たちを表すもの、シックスの妄想した友達、シックスの持つ幼児性や優しさ、人間性の象徴。ノームが人間とは限らず、例えば小動物の擬人化等々、様々な解釈が成り立つ存在です。

光を浴びて石になっている姿がありますが、これは大人に捕まって自由を奪われた、あるいは孤児院かなにかからの脱走に失敗した子供の表現かなと。序盤に関しては、ほぼほぼ孤児仲間の表現だと思われますが、キッチン辺りからはやや謎が残るというか、仲間の子供と受け取るには少し難しい部分が散見されます。

そんなノームは劇中後半に入って、シックスによって捕食されてしまいます。なんともビックリなシーンですが、このときの背景には黒いシックスの姿が映っており、これは同一の存在であったシックスが分離したという暗喩じゃないかと思います。

ln ev1-3

孤児仲間の誰かに、シックスがキャリアとなっていた疫病が遷り、その孤児が死亡した。あるいはノーム=シックスの幼児性と捉えた場合、6歳の少女を表していたシックスの死と捉えることができます。今まで共にあった疫病がシックスを食い破り、疫病が一人歩きし始めたわけです。この次がレディーとの対決なので、そのシーンにおけるシックスの特異性を考えると、ここでもう一人のシックスが現れるというのは意味深です。

初見時には、孤児仲間への裏切りを起こした……みたいな解釈をしていて、シックス = レディー説を取っていたんですが、レディーの末路を鑑みるに、この線は無いかなぁ……と今は思っています。

レディとの関係性

最後の敵となる仮面の女性レディとは、何らかの繋がりを感じさせますが、劇中の描写が曖昧なので確とした話は出てきません。レディが口ずさむ唄は、シックスが飢餓に襲われているシーンで流れているものですね。

  • 孤児となった少女シックスを拾った女性
  • 疫病シックスによる最初の犠牲者
  • シックス = レディ

概ね、この3パターンが考えられます。実際の肉親というのは、文化背景の違いから現実的には考えにくいです。船というモチーフや、前半と後半の描写から、少女シックスの居る場所が西洋から東アジアに移動しているのは明白ですしね。

シックス = レディも、終わったとに考えてみると、ちょっと苦しいですし、少女シックスとの関係性は、ほぼ無関係だった可能性が出てきます。

ln ev2

上はレディ戦後のイベントシーン。レディはシックスに捕食されますが、その際のシックスには今までとは異なる部分があります。「コホコホ」と、それまでのシックスは空腹時になると咳き込む素振りを見せており、疫病のキャリアとなっている少女の側面を見せます。それはノーム捕食までは変わりません。しかし、レディ捕食に至っては例外で、咳き込むこともなくレディの首に噛みついています。

明示的に戦闘になるのもこれだけです。

これには、レディと対峙したシックスは疫病の擬人化した存在のみであったという解釈ができます。今までシックスの中にいた疫病が、なんらかの理由で宿主の元を離れ、第三者に明確な傷害を加えたわけです。孤児として国を渡った少女が、現地で出会った女主人がレディで、その後シックス経由で持ち込まれた疫病によって死んだ……と、このように解釈できます。

シックス = レディ説を取る場合、シックスが現地で成り上がった姿がレディで、過去の自分自身、罪深い半生を振り返った先に、自身の持ち込んだ疫病によって命を落としたという形になります。ただしシックス = レディ説を採る場合、人種の問題が障害となりますし、可能性としては前者の方が高いです。

リトルナイトメア -ズ-

本作のタイトルですが、恐らくはこれもダブルミーニング。

  • 少女シックスを代表とする孤児達の悪夢
  • 小さな悪魔のような存在たち

前者はゲームの紹介にも出ている表向きの説明で、後者が疫病の原因となる存在、病原体かウィルスのことを指しています。

ln ev3

ラストで次々とゲストが倒れていくシーンで、疫病がパンデミックしているのが確認できます。少女シックスが密航して持ち込んだ疫病が、なんらかの突然変異を起こして爆発的に広まり、多数の死傷者を出したというのが、私が予想する事の顛末です。

のちの孤島に取り残される描写を見るに、疫病の親元である少女シックスだけが免疫持ちで生き残った。疫病は感染すべき相手がいなくなり、疫病自身は行き場を失ったという解釈になるのかと。致死性の高いウィルスは、宿主を早い段階で殺してしまうので、広まりにくいという特徴を持っていますからね。