zeld botw top

取り敢えず、祠100%まで埋めた後での感想とレビュー。行き帰りの電車でしかプレイしてなかったから、なんと2ヶ月も掛かってしまった。

短評

64時代の2部作に匹敵する進歩を感じさせるハイクオリティさを誇るアクションRPG。最高峰のオープンワールドだが、それ特有の欠点は残されたまま。シリーズとしては、得た部分と、失った部分がある。

ゼルダの伝説 Breath of the Wild
時のオカリナ、ムジュラの仮面
5
  • 臨場感に欠けるシナリオ
  • ゼルダ特有の奇人変人
  • サブクエストがやや単調
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7
  • 適度なトゥーンレンダリング
  • バリエーションに富んだロケーションの数々
  • 性能不足を絵作りでカバーしている
  • ダンジョン関系のデザインが単調(ボスも含む)
  • 処理落ちが酷い場所がある
時のオカリナ etc
時のオカリナ etc
6
  • 雰囲気に合った良曲揃い
  • 適切なサウンドエフェクト
  • 曲が小粒でインパクト不足
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8
  • 軽快なアクション性
  • 探索と戦闘のシームレス化
  • フィールドやオブジェクへの干渉がより自然なものに
  • 物理パズルの限界
  • 料理の多くが死に要素
  • オートランくらいは欲しかった
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9
  • オープンワールドの高い完成度
  • 量のために質が犠牲になっている
    • ダンジョンの質が不揃い
    • パズルの大味さ
  • アクションとしてのボリュームに欠ける
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10から1まで10段階評価ですが、実質端の点は欠番です(10年に1度程度では付けるつもりが無い)。遊=ゲーム性、コンセプトの良さ。充=コンテンツの充実度、作り込みの評価です。

評価詳細

完成度の高いオープンワールド

オープンワールドという舞台装置の開発に主眼を置いたゲームです。昨今だとちょっとした流行になっていて、右も左もオープンワールドを目指しているような状況ですが、その中でも屈指の完成度を誇るオープンワールド、フリーローミングのゲームです。

オープンワールドと謳うゲームは数多くあれど、それが武器になっているゲームは少ないです。むしろマイナスに作用して完成度を下げるだけになっているパターンが多いのですが、本作はオープンワールドの良さを突き詰めて、プラスの側面を明瞭に表現しています。

プレイヤーのアバターとなるキャラクター(リンク)と、構築されたハイラル世界との連結が非常にスムーズで、シンプルに纏められたゲームシステムは現実世界の物理法則に従うようになっています。火の延焼、雷の挙動など、誇張が過ぎる面もありますが、アニメ調の世界構成がその違和感を消しています。ダンジョンの一部を除いてどこでも昇ることができるので、探索における自由度が非常に高い。また戦闘と探索がシームレスに繋がっており、広大な世界の冒険をかなり自然にしています。

各所に設けられたファストトラベルポイント、パラセールによる飛行、盾による滑走など、探索の負担を軽減する要素も完備されています。馬はもうちょっと高低差に強ければ良かったのですが、それでも便利な移動手段です。

ゲーム中で表現された世界は広大で変化に富んでおり、探索するに値するだけの密度を概ね保っています。この概ねというのは少々ネガティブな表現ですが、それでも他のオープンワールドゲームに比べれば遙かに作り込まれており、TESシリーズ(オブリビオン、スカイリムなど)とは異なるアプローチではあるものの、優れた世界観を提供しています。路線的には過去作の風のタクトや、スカイウォーソードもほぼオープンワールドだったわけですが、それらが持っていた欠点を上手く改善したリベンジ作と言えるのかもしれません。

恐らくは今後のゲーム作りの試金石になるだろう存在であり、オープンワールドのゲームとしてはスカイリム以来の評価を与えても良いと思います。欠点だらけのTESシリーズと違い、万人受けするゲームに仕上がっていますし、新たなる台風の目です。

優れたアクション性

オープンワールドでは最も戦闘が面白いゲームです。先駆者のTESなど、これだけで色々と台無しにするレベルで酷いので、かなりのアピールポイントになっています。リアルよりで快適さに欠けていたウィッチャーよりも軽快で、動かしているときの違和感がありません (ウィッチャーは純粋オープンワールドではありませんが)。

近接武器のバリエーションは過去作より名実共に増えました。片手剣、両手剣、槍、杖の4パターンがあり、概ね片手剣が主力になるものの一長一短あります。属性効果も少し強すぎな印象もあるものの、魔法代わりのアクセントとなっています。

敵のAIも程ほどに倒しやすくなっており、万人受けする難易度に調整されています。敵の近接攻撃モーションは非常に分かりやすく、パターンも少なめ、それぞれの差違もすぐに見て取れると、アクションゲームの入門作に相応しい作りとなっています。初見殺しな敵もいますが、わけ分からん殺しを仕掛けてくるようなモンスターはいません。

フィールドの広大さや、プレイ時間の長さに対して敵のバリエーションが少ないことは欠点ですが、この規模のオープンワールドだと、むしろマシな方。それでも足りないというのがオープンワールドというレベルデザインが持つ問題の一端でしょう。

オープンワールド特有の欠点

本作は優れたオープンワールドなんですが、問題点は少なくありません。模範的なオープンワールドを目指すがあまり、それ特有の欠点が改善されていないという命題が残ります。

ストーリー性の欠落

ゲームとしては面白くとも、ストーリー性は過去作に比べて大きく劣ります。特にシナリオ重視のゲーム作りが全盛だった時代に作られた時のオカリナ、ムジュラの仮面に比べると、オープンワールドのための制約から非常に淡泊で、臨場感のない展開になっています。ゲームに対してマイナスの影響を与えないだけ救われていますが、現状あってもなくても同じというレベルに留まっています。

これはオープンワールド特有の欠点であり、コンセプトを守るなら致し方ない側面があります。臨場感に優れたシナリオ、使命感の強いシナリオにしてしまうと、自由な行動を阻害するので、オープンワールドであることを活かそうとするなら、必然的に淡泊な展開にせざるを得ません。急がないといけない状況で寄り道してるとか……と違和感が仕事すること受け合いです。

サブクエストもそんな感じであり、どうもお使い感が強くなりがちです。箱庭ゲーだったムジュラの仮面など、時間を繰り返すという設定があるので、自由度の高いサブクエストを盛り込めたのですが、それと比べると明確に劣る印象があります。傍観者ながらも高い影響力を持ったムジュラのサブクエスト級は望まない方が良いです。

拡張性に乏しいゲームプレイ

始めから全てが提供されている反面、ゲームプレイの拡張性が犠牲になっています。理想のオープンワールドたらんとした反作用とでもいうのか、それに縛られている側面があります。

根幹を成ししている物理パズルですが、それ特有の大味さと、初期アイテム縛りが禍して玉石混淆。結局、ビタロック、マグネキャッチ、火の3つにパターン化され、まるで面白みの無い解法の祠が相当数存在します。メインクエストのダンジョンも捻りが無く、ダンジョンの面白さ、パズルの出来という点では過去作から見て明らかに劣っています。

過去作だとダンジョン > フィールドだった面白さがが、フィールド > ダンジョンになっており、祠に入るよりもフィールド探索を優先したくなるという逆転現象が発生しています。確かにフィールド探索の面白さは過去作より秀でているのですが、ダンジョン部分が雑になった側面は確かに存在します。

物量故に質が落ちる

これに関しては前二つと重複する部分もありますが、オープンワールドにおける利点と欠点の焦点です。本作はオープンワールドゲームの中では極めて高い完成度を誇りますが、ゼルダシリーズとして見ると、質の部分で劣る面が否めません。コンセプトとしての優秀さや、進歩性はあるものの、やや初速頼みな側面があります。

広大な世界を用意する関係から、密度や作り込みの面でどうしても薄くなるというオープンワールドの悪い部分が現出しています。それを改善するにはひたすらリソースをつぎ込むしかないのですが、リニアに反映されるとは言い難い。費用対効果が悪すぎる開発スタイルであり、それでなくても開発費の高騰が進んでいる状況なのに、果たしてどれ位のスタジオが真似できるかというと……。Botwに関して言うなら、フォトリアルにしなかったことに大分救われたんじゃなかろうか。

ある程度はAIによる自動生成でカバーするにしても、人の手が介在しないと単調なお使いゲーになることは想像に難くないですし、そのシステムを組むまでに掛かるリソースがどうなるか。

本作はオープンワールドゲームの世界に一石を投じたものの、職人芸と多大な労力をつぎ込んでいる関係から、今後同水準のゲームがぽんぽん出てくるとは思いにくいです。この唯一無二の部分は本作の評価を高める一因になっているのですが、後発作にとっては大きな壁になるでしょう。