dq11 title

ドラゴンクエスト11 過ぎ去りし時を求めてのクリア後レビュー、評価です。一応、決定的なネタバレは避けていますが、完璧ではないです。あと4000文字越えているので、結構長文。

短評

シリーズの集大成。グラフィックは大きく進化したが、ゲームプレイの平凡さが大きく足を引っ張る。

ドラゴンクエスト11(PS4)
ドラクエ3、5
6
  • 昔ながらのドラクエ
  • 王道の勧善懲悪ファンタジー
  • 堀井氏らしい楽観性
  • 堀井氏らしいエロ親父要素
  • 風土の描写が明確
  • ファン向け要素多数
  • 序盤の展開が散らかっている
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8
  • 適度なトゥーンレンダリング
  • 3Dモデリングの上手さ
  • 昔の鳥山テイストを再現
  • 下品にならないあざとさ
  • ボス系等がチト微妙
  • 戦闘のカメラワークに改善の余地あり
過去作全て
ドラクエ3、4、5
6
  • ぱっとしない新曲BGM
  • 過去作のBGMに救われている
  • やっぱドラクエ3のBGMは神
  • CVなし
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5
  • 明確にRPG初心者向け
  • ゆるやかなレベルデザイン
  • 戦闘演出が長く、ゲームテンポが悪い
  • 新要素が乏しい
  • 行けないルートが多すぎる
  • 移動速度が遅い
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6
  • 目立つバグなし
  • リプレイ性は乏しい
  • 存外狭さを覚える世界
  • 使い回し部分が割と目立つ
  • AIの残念さ
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10から1まで10段階評価ですが、実質端の点は欠番です(10年に1度程度では付けるつもりが無い)。6点で平均的、及第点と呼べる数値にります。

遊=ゲーム性、コンセプトの良さ
充=コンテンツの充実度、作り込み、完成度の評価

評価詳細

王道の勇者ストーリー

原点回帰を題材にしているためか、どこかで見たような展開が非常に多いです。全体の流れとしても、過去作を彷彿とする部分が多く、それ故にドラクエらしい作品に仕上がっています。ネタバレを避けるために詳しい言及は避けますが、ファン向けの要素を詰め込むだけ詰め込んだ新たなるロトサーガになるんでしょう。時系列的にすごく間が空いているので、普通に新3部作とかになってもおかしくないです。

メインフレームは明確な勧善懲悪の王道RPGで、典型的とも言える貴種流離譚。要するにいつものドラクエ。教義的な側面が強く、物わかりの良い人が多いです。特に今作においては、主人公も追われる立場なのに、相変わらず旅先で人助けやら、お使いやらが頻発します。村や町毎にドラマがあるのはまさにドラクエらしいのですが、加入する仲間が多いこともあって、序盤の展開が緩慢すぎるきらいが抜けません。せっかちな人間には割と苦痛なので、もうちょっとテンポ良く進めても良かった気がします。もうちょっとスピーディーに展開していれば、追いかけっこ的な緊張感が生まれたでしょう。恐らくは最大の減点要素で、雑魚戦が単調すぎるのと合わせて、物語への没入感を削ぐ一因となっています。

勇者の存在が前面に出てくるのは割と久々ですが、それに加えて頼りない主人公の成長譚としての側面も強いです。主人公自身は喋らないくせにやたらとキャラクター性が垣間見えるというか、なんか良い奴なんだけど間が抜けてて、子供の頃はやんちゃだったけど、成長するに従って大人しくなった内向的な男性って感じになっています。まさか大事なときに宴会して眠りこけて、敵に助けられる勇者がいるとは思うまい。カミュ、ベロニカ、マルティナ、ロウと年上にリードされるシーンが多いです。まぁ、ベロニカは同い年なんですけど。

何度かターニングポイント、急展開を迎える部分がありますが、特に意表を突かれるということもなく、概ね予想通りに話が進みます。それが強引だったり、陳腐だったりするのが、少々問題ではあるのですが、世界観との齟齬がないので、全体としては上手く纏まっています。世界観がルーズなので、多少の矛盾やご都合主義ならカバー出来るというのは大きいです。悪は滅びて、善人が報われるため、拒絶反応を示す人も少ないはず。

とはいえ、各種要素を上手く使いこなせたかというと怪しい部分が多く、シンプル過ぎて高い評価を付けるのは難しいです。まぁ、分かりやすさと万人受けを目指した結果でしょう。極端な減点要素はないものの、加点要素も少ないです。

進化したビジュアルとエロ親父要素

進化が目覚ましかったファイナルファンタジーシリーズに比べて随分と後れを取っていた部分ですが、ようやくグラフィック面が高い水準に戻ってきました。ポリゴン数が増えたので、鳥山デザインの再現度が飛躍的に増しています。スピンオフのドラクエヒーローズで存在した違和感みたいなものがかなり改善されました(まぁ、開発元は違うんですが)。

スライムはまさにスライムだし、キラーパンサーはまさにキラーパンサー。過去作の絵をそのまま変換したようなグラフィックを再現しています(例えばガルーダ、しんりゅう系のモンスターは毎度、あの斜めの角度でカメラ目線を決めてくる)。元が分かりやすいデザインなので、ほぼ完成形に近いです。

仲間キャラクター達もちょっと古くさい感じのアニメ調で、エネルギッシュだった頃の鳥山作品を彷彿とさせます。頭身が上がっているので、これはドラクエ4~6のイメージに近いでしょうか。エマやカミュにちょいちょい不気味さの谷を感じることがありますが、ライティングをちょっと弄ればすぐに改善するような気がします。キャラクターのパターン、背景のパターンが少し乏しい気もしますが、これ流用でPS4世代の間に何作か作れそうですし、おいおい増やしていけば良いんじゃないかと。

あと特筆すべきこととして、モブ女性キャラがやたらと良くできています。パーティーメンバーも良くできているんですが、友情! 勝利! エロ!というジャンプのノリに忠実です。マルティナとか、ちょっと狙い過ぎな部分もありますが、下品にはなっていないです。

再録BGMに救われている

すぎやまこういち氏御年85歳。ギネスに載ってしまった高齢の作曲家だけあって、やはり往年の頃のキレは失われている気がします。新曲で過去作に匹敵するようなスコアは無く、また作業が難航していたのかBGMの使いどころも少しずれている印象。音響系の演出にはもう少し工夫が必要だったでしょう。

それでも過去に使われたBGMの良さは健在で、序曲や冒険の旅の良さを再確認できます。全体としては微妙と言わざるを得ませんが、これら再録曲の存在は本作の救いとなっています。ドラクエ3のフィールド曲「冒険の旅」が流れ出したときが非常に印象的です。個人的には同氏が作曲された特撮映画「ゴジラvsビオランテ」のBGM 「ゴジラ組曲 1989」、「スーパー X2」がすごく好きなんですが、ゴジラvsビオランテの公開が1989年、そしてドラクエ3の発売も1988年で、まさに仕事盛りの頃だったのでしょう。往年の才能もよる年並みには勝てなかった感じでしょうか。85歳で現役というのは、普通にすごいのですけども。

あとキャラクターボイスですが、2015年に発売されたリメイク8では採用されているのに、本作では再びオミットされています。ヒーローズは割と違和感の残るキャスティングでしたが、リメイク8は上手く嵌まっていたので、それが無いのはやはり残念です。発売タイミングが小学生が夏休みに入る時期の一週間遅れなので、多分時間に追われて手が回らなかったパターンでしょうけど(スプラトゥーン2がそっちのタイミングでリリースされているように、普通ならそれに合わせる方がベターでしょう)。

古典的ゲームデザインと難易度

ゲームデザインの指針として誰にでもクリア出来るように、誰にでもできるようにという方向性を堅持しており、それについてはまずまず守られていると思います。レベルもサクサク上がるため、意識してレベルを上げる必要は無いです。効率プレイを目指すのなら、効率の良い狩りも必要でしょうが、その辺の裁量は自由ですしね。

要するに普段ゲームをしない人でも大丈夫だし、万人向けな調整ではあるのですが、やはりこの手のゲームに慣れているプレイヤーにとっては簡単過ぎるきらいがあります。昔のドラクエが難しかったかと言われると、そうでも無いのですが、本作にはキャンプポイントという回復要素が加わったので、それを加味してもう少し雑魚敵を強くすべきだった気がします。各キャラクターの行動ターンに逐次コマンド入力なので、早々に自分で操作するのが面倒になります。モーションが良くなった分だけ戦闘のテンポが悪くなったことと、エンカウントがシンボル式で逃げやすい部分も、MP管理を考えないAI任せでも良いだろう感を強めています。AIは残念行動を嵐のように繰り出すのですが、道中の敵ならそんなAIで十分な難易度になっており、敵の行動も状態異常連打か、それもなしに力任せ系ばかりで山場に欠けます。折角モデリングが良くできているのに、モンスター達が没個性になっていて少し残念。

また戦闘はマイルドすぎて起伏がない一方、れんけいを必須とするミニクエスト、ボスなど煩わしいだけの部分が散見され、ゾーンに入ったパーティーメンバーを控えにするという発想に至らなかった小学生とかが、そこで大いに詰まる可能性を考慮していません。簡単なのは良いにしても、時間が掛かるというのが面倒臭く、親切すぎるナビゲーションの一方、なんか煩雑になっている部分も残っています。

新要素と旧要素

温故知新と言いますが、本作は執拗すぎるナビゲーションや、乗り越えられない段差や、飛び降りられない足場、古くさい部分と流石に世話を焼きすぎだろ的な新しい要素が、相乗的に冒険感を減退させています。下手に絵が良くなったため、常識的に行けそうなのに実際には降りられない段差、登れない場所が目立つようになった印象。モンスターの配置が密集しすぎていて、なんか不自然なので動植物の棲息感に欠けます。

新要素のキャンプポイントは下手すると街より便利なので、宿屋や教会の存在感を喰っています。これは宿屋や教会の存在が、そもそも時代遅れな感も強いですが、キャンプポイントが近すぎて無駄になっている部分もあり、位置をもうちょっと工夫した方が良かったでしょう。回復する必要も無いのにルーラー登録のためにキャンプする必要があって、回復地点としてのありがたみが乏しいです。レベルアップ時の自動回復は8からの要素だった気がしますが(うろ覚え)、どっちか片方だけで良かったかなぁ。

スキルパネルは序盤において必要ポイントが重すぎて、パネルの取り直しも暫くできないので、キャラクターを成長させる要素としてはなんか微妙。スキルパネルは最初から振り直しができても良かったですし、もっとパネル数を増やして、どんどんめくれるようにすれば、明確に成長のビジュアルとして機能して良さそうなんですが……。序盤はスキルパネルの取り直しができないから、取らなくてもいける難易度にしたんでしょうが、それ故に単調な序盤が続き、楽しみを奪われた気分になります。レベルアップで覚える呪文も残っていますが、これもスキルパネルと紐づけて、特定レベルで自動開放される形の方がツリーの伸ばし方に幅ができて良いんじゃないかと思ったり。いや、プレイヤーの裁量権を大きくすると、難易度調整が難しくなるというのは分かるのですがね……。

あとは先程ちらっと触れたゾーン管理くらいですが、ゾーンになったパーティーメンバーから外して、ゾーンを要所のために残しておくだけです。連携技が割とインチキ臭いものが多いので、ボス戦で開幕連携で流れが決まるパターンもあり、控えメンバーが増える頃には多用することになるでしょう。